パレットシステムはないが、パーキングドライバーを抱えているディスコは、六本木周辺にある。いまは閉店したが、お立ち台で有名になった芝浦のジュリアナ東京でも、客がボーイに車のキーを投げ渡す光景がみられた。ただし、これはスタイル。システムとは趣が異なる。要するに駐車場が狭いのだ。狭すぎるため、素人では車が停められないというさみしい現実がある。それでなくともかぎられたスペースをフルに活用しているから、一台でも台数を多く停めようとするなら、とてもじゃないが、素人の手には負えない。パーキングドライバーという専従従業員のパーキングテクェックというのは、みていてもほれぼれするくらいあざやかである。倒したサイドミラーの開かわずか数センチメートル、場合によると、ミリ単位で近づけてしまう。それこそ神業のようなものだ。一種の特技である。車室スペースが狭くても関係ない。とにかく何台停められるかが技術の差なのだ。もちろん客は入れ替わるから、始終、車を動かしている。彼らにいわせると、何ミリで隣接車に停められるかが腕のみせどころであり、誇りであるという。余談だが、共通しているのは、スピードにはあまり興味がないということだ。ジリジリと隣接車との距離を縮めることに快感を感じている様子。もちろん、こすったり、傷をつけたりするのは、パーキングドライ。ハーとしては失格である。なんとも特異な技巧であるが、スピードに興じるよりは、社会的貢献度は高いともいえよう。心理学の分野だが、狭い路地を巧みにすり抜けるのと、高速をガンガン飛ばすことに快感を得るのと、ドライバーの心理というのはふたつに、きれいに分かれるのかもしれない。バレットシステムも、駐車場管理・運営のひとつである。人件費との絡みはでてくるが、ホテルーレストラソでこれを導入するのも手であろう。ステータス願望をくすぐる意味では、明確な差別化の一種になり得る。考えてみれば、ドレスアップしてホテルに行ったはいいが、狭い駐車場に苦労して自分でマイカーを乗り入れる姿も絵にならない。ホテルは、非日常の生活、世界を売りものにする部分があるのだから、バレットシステムというドラマチックな演出も、あっていいのではないか。それでなくとも、アメリカのように広いパーキングエリアにトーンと車を突っ込むのと違い、日本の場合は、薄暗い地下駐車場などをウロウロするのである。バレットシステム的な要素を一部、仕組みとして導入するなら、ホテルの格もあがろうというものだ。狭い駐車スペースしか確保できないのだから、むしろ、あってもいいサービスのひとつと考えられるが、いかがなものだろう。
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