ヨナ抜きの哀感、ヨナ抜きで失われた哀感

2012.02.01

人工的な折衷音階だったヨナ抜きが、日本人のこころに染みてくる過程には、トップダウン方式(「名曲」が学校教育等を通じて大衆に広まっていく)と、ボトムアップ方式(壮士演歌など、とにかく“大衆ノリ”がそのまま形をなして広がっていく)とがあります。前者の例として挙げられるのが、(叱られて、清水かつら作詞・弘田竜太郎作曲、20)、(赤とんぼ、山田耕筰作曲、22)、(月の沙漠、佐々木すぐる作曲、23)、(あの町この町、中山晋平作曲、25)など、今なお愛されるニッポンのうた、心のうたの数々です。

(参考)
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これらのうたは、大正時代になって起こった、“芸術的”な童謡創作の運動の流れの中で出てきたものです(鈴木三重吉が創刊した『赤い鳥』はその先駆)。それぞれが、ヨーロッパのメロディを日本的抒情性と融和させることを狙っていますが、(赤とんぼ)がドレミソラの5音をかなり西洋歌曲風に並べているのに比べ、(叱られて)は長調風ではあるものの、♪「ねんねーしなー」の中間終止のところも、最後の♪「なきやーせぬかー」のエンディングのところも、民謡音階を意識した作りで、わびしさをにじませています。(月の沙漠)は、すでにこのころ流行歌にも定着してきていた「ヨナ抜き短調」(ラシドミフアラ)のうたです。