殺すなんてあまりにも馬鹿げている

2012.02.08

僕はどうしたいか?僕はここで小さい箱のなかにいることでしか安心できない。安易なこの場所から現実に一瞬だけ繋がりたいだけなんだ。誰かと繋がる?誰かと繋がるということがどういうことかまだわからない。本当の心の交流を知らないし、知らなくていい。「外の世界に出ると俺は俺でなくなるのかもしれない。俺はもはやこの小さな箱のなかでしか俺でいられなくなるのかもしれない。だから外の世界の人と会うことはまだしてない」「まだ?これからもかしら?」「わからない」「私だってまだこの番号で泣いているだけで、会ったことはないの。あなたと同じ。私は外の世界にいるけど、同じように心のなかに閉じこもっている。本当の自分で誰かと会ったことなんてない。本当の自分でこの世界で生きたことなんてない」「うん」「本当の自分で会ってみない?」「本当の自分って何?」「わからない。わからないけれど、私もちょっと狂っているの」「俺にどうしてほしい?会ってどうしてほしい?」「本当の気持ち言っていい?」「うん」「……私を、殺してほしい」「え?」「もう言わない。女の暗い秘密って一度しか言わないものなのよ」どんな苦しみがこの世界にあったのか知らないけれど、私を殺してほしいという女性を正直に殺すなんてあまりにも馬鹿げている。実際、会う約束をしたのはそれから何度かの奇跡が起こってからだ。つまり「四番目の光」で僕と彼女は繋がった。いつもの通り、彼女はただ受話器の向こうで泣いていた。僕たちは偶然に選ばれたのだ。彼女は僕を選んだし、僕も彼女を選んだのだ。偶然という運命の糸は僕たちを繋いだのだ。